プロティアン・キャリアとは、これまで会社に依存していたキャリア形成を個人に取り戻す考え方です。
プロティアン・キャリアの定義
プロティアン・キャリアを提唱したダグラス・ホールは、以下のようにキャリアを定義しています。
- キャリアとは成功や失敗を意味するのではなく、早い昇進や遅い昇進を意味するものではない。
- キャリアにおける成功や失敗はキャリアを歩んでいる本人によって評価されるのであって、他者によって評価されるわけではない。
- キャリアは行動と態度から構成されており、キャリアを捉える際には、主観的なキャリアと客観的なキャリア双方を考慮する必要がある。
- キャリアはプロセスであり、仕事に関する経験の連続である。
従来型のキャリアとプロティアン・キャリアを比較
これまでのキャリア観では、キャリアの成功とは「地位」や「給料」と考えてきたのではないでしょうか。40代以上の皆さんは、特に意識することなしに(意識している人も多いかもしれませんが)キャリアとは同期や同年代との「地位」や「給料」を目指した競争であったと振り返るのではないでしょうか。
しかし、新しいキャリア観としてのプロティアン・キャリアでは個人の「心理的成功」をキャリアの成功と捉えます。

プロティアン・キャリアに必要な2つの能力とは?
プロティアン・キャリアを形成するには、アイデンティティとアダプタビリティという2つの能力が必要だと言われています。
アイデンティティ
アイデンティティとは、自我同一性とも呼ばれ「これが自分である」という感覚を持つものです。
プロティアン・キャリアを提唱するダグラス・ホールは、アイデンティティの一部に「サブ・アイデンティティ」が存在すると考えています。
たとえば、ある人が働く人であり、母親であり、PTA役員でもあったとすると、メインにキャリア・アイデンティティがあり、サブ・アイデンティティに母親としてのアイデンティティ、PTA役員としてのアイデンティティと3つのアイデンティティを持つことになります。
ホールの考えによれば、キャリア発達はキャリア・アイデンティティが成長し、サブ・アイデンティティに分化することによって生じるといいます。
では、なぜプロティアン・キャリアを形成するために、アイデンティティが必要な能力なのでしょうか?
変幻自在なキャリアを作る前提には、自分自身の価値観や興味がはっきりしていること、自分は過去も現在も未来も連続しているという確信が必要だからです。
もし、自分のアイデンティティがはっきりしていなければ、変化し続ける時代に翻弄され、プロティアン・キャリアが目標とする心理的成功からは遠ざかってしまいます。
変幻自在なキャリアを構築するためには、アイデンティティをはっきりしておくことが必要です。
アダプタビリティ(適応能力)
アダプタビリティ(adaptability)をそのまま翻訳すると「適応性、順応性、融通性」といった意味になります。プロティアン・キャリアに必要な能力としての「アダプタビリティ」とは、適応コンピテンスと適応モチベーションのふたつがかけ合わさったもので、能力というよりは動機づけの面を持っていると捉えられます。
適応コンピテンス
まず、適応コンピテンスは3つの要素から成り立っています。
アイデンティティの探索
アイデンティティを変えたり、維持したりするための潜在能力を発達させるために自己に関するより完全かつ正確な知識を得ようとする継続的な努力
反応学習
環境からのサインに気づき、さまざまな役割行動を発達させたり、最新のものにすることによって、変化し続ける環境からの要求に効率的に反応したり、環境に影響を及ぼすこと
統合力
変化し続ける環境からの要求に適切にこたえるための行動と自分のアイデンティティの一致
適応モチベーション
次に、適応モチベーションとは、適応コンピテンシーを発達させたり、所与の状況に対して適応コンピテンシーを応用しようとする意思のことです。
キャリア上の意思決定とは、数年や数十年に一度の大きな決断をするときという意味ではなく、日々の選択を意味するようになっているとホールは考えています。
つまり、毎日の生活の中で、自分自身のアイデンティティを自己評価しながら、アダプタビリティを発揮して、変化し続ける環境に適応し続ける必要があるのです。


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