ChatGPTに代表される生成AIは目覚ましく進化していますが、生成AIを使ったアプリケーションもこれからどんどん出てくるでしょう。つまり、今年以降、私たちはあまり頭を使わなくても使えるようなツールとして目にしていくこととなると思います。AIエージェントというのはその一部です。
そんな想像を超える生成AI時代の中で、私たちが身につけるべきスキルとは何でしょうか。それを考える前提として、生成AIによって人間の行動で何が変わるか、生成AIがどんな価値を提供してくれるかを改めて考えてみたいと思います。
生成AIが人間に提供してくれる価値とは?
生成AIが人間に提供してくれる価値の一つ目は、人間が設定した課題に対して、生成AIは何をしていけばいいかという項目とプロセスを教えてくれます。例えば、「フランスに旅行にいきたい」、「データサイエンティストになりたい」という課題に対して、何をどの順番でやっていけばいいかを教えてくれます。人が何かをやりたいと思っても、具体的に何をしていけばよいかモヤモヤしていて、複雑そうに見えて、ステップが分からなくて戸惑うことが多いですが、このモヤモヤを明確にして、やるべきことに小分けにしてくれることは、人間が悩まずに何かを始めることを後押ししてくれるはずです。
二つ目は、分解した一つ一つの作業を生成AIが支援(代替)してくれることです。やるべきことを細かく分解したことで、人間としても理解しやすい内容となっていますが、生成AIが支援を得て一つ一つ実行に移すことが可能となります。前の例でいうと「フランスに旅行にいきたい」という課題に対して観光の順番を教えてくれたり、航空券を予約してくれるイメージです。これまで人間として面倒くさいと思っていた作業もAIがやってくれるようになります。
そして、三つ目としては、分解した一つの作業について、AIによって高速で何回も試行することができます。今まで能力的に一回しかできなかった作業について、何度もトライして何度も失敗することが可能となります。前例でいうと旅行計画をいろいろなパターンで何度でも検討できることになり、自分だけでは気付かないパターンも教えてくれるばずです。このAIによる高速な試行については、例えば、創薬の分野では実用化されていますが、個人としても何かを学習していく際に、大きな力を発揮してくれます。これまでは何年という経験が必要であった分野でも、このトライ&エラーを何度も経験できることで、人間は短時間でスキルやセンスを磨いていくこともできるようになるのです。
人間はどんなスキルを磨くべきか?
「課題解決」より「課題設定」スキル
生成AIは、これまで人間にとっては考えることに時間がかかって、モヤモヤしていた作業をわかりやすく分解してくれて、更に面倒くさかった作業の実行も高速で何回もやってくれることになるのです。そうすると人間にとって一番大事なのは「問題解決」するスキルよりも、適切に「問題設定」するスキルとなるのではないでしょうか。つまり「この問題を解きたい」「この問題をと解決しなければならない」と適切に設定することができるかというスキルです。
「この問題を解きたい」というのは、日常の仕事の作業レベルかもしれないし、事業目標の達成かもしれないし、世の中をよくするための仕組みづくりかもしれません。または個人のキャリアとして、「自分が何を学ぶべきか」かもしれないし、「どのようなキャリアを歩むべきか」という課題かもしれません。いずれにしても、AIが分割や実行を支援してくれる環境においては、仕事レベルでも個人レベルでも状況に合った課題設定をすることが、人間にとって最も大事なスキルとなるのではないでしょうか。
もちろん、生成AIに対して、ちゃんと作業を分解してくれて、作業を実行してくれるように指示する方法は学ばなければなりません。これは、プロンプロエンジニアリングという分野もある通り、今後学ぶべき一つの大きな分野となります。
課題設定とキャリア形成
個人での課題設定の大切さの話をしましょう。
自分がどのようなキャリアを歩むかは、中長期と短期の課題設定の繰り返しによって、徐々に見えてくるものと言えます。既にキャリアの目標を持っている方は、その目標に向けて、今の自分がやるべき課題を設定して、それをAIを使って解決することを目指します。一つ一つの課題を解決していくことで自分が成長し、更に大きな課題設定をできるというループを回せるようにしていきたいイメージです。AIによってこれまでより効率的に解決できると共に、AIの知見を深めることも目指します。
まだ自分のキャリアに迷っている方は、可能な範囲で自分のキャリアに対する大きな方向性は持ちつつも、まずは自分に興味がある小さな課題から取り組んで見てください。AIを使いながら課題を解決することで、自分のモチベーションややりがいも高まり、次の課題の設定にもつながります。また、小さな課題設定と課題解決を繰り返していく中で、自分のキャリアが見えてくるはずです。
生成AI時代は、トライ&エラーを何度も経験できることを思い出して、自分が興味があることは、今までは無理だと思っていたことにも、自分の課題として設定してみて下さい。
例えば、これまでプログラミングのセンスを磨くのは難しかったですが、生成AIのサポートによって、プログラムの8割の時間を短縮できれば、プログラムの課題設定を濃縮体験できるので、プログラミングのセンスをこれまでの何倍かのスピードで磨くことが可能です。
同様に、絵や音楽のセンスについても、自分にとってカッコいいもの、素敵だと思うものを生成AIによって大量に浴びることができます。また、自分も創意工夫しながら格好いい絵や音楽を制作して、SNSに挙げてみるということもでき、いいねやコメントによるフィードバックが得られます。この一連の濃縮体験をすることによって、これまでは非常に時間のかかっていた芸術的なセンスを磨くこともできるのです。
また、一つのことを探求するだけじゃなくて、複数のことを同時に扱う、所謂プロデューサーとしての成長の可能性があるのがこれからの時代です。つまり、AIを使いこなせる人にとっては、すごく可能性に満ちた楽しい世界となるのです。


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