ジョブ・クラフティングとは?
「ジョブ・クラフティング」という言葉を聞いたことはありますか?
「クラフト」という単語には「手作業で何かをつくる」という意味合いがあると共に、「素材の性質を理解し、それを活かす技術と創造性が求められる」とも定義されています。従って、「ジョブ・クラフティング」は以下のように定義できます。
「個人が仕事にやりがいを見出せるように、自分の価値観や強みを活かしながら、主体的に自らの仕事をつくっていくこと」
また、以下のようにも言い換えることもできます。
「従業員一人ひとりが仕事に対する認知や行動を自ら主体的に修正していくことで、退屈な作業や“やらされ感”のある仕事を“やりがいのあるもの”へと変容させる手法のこと」
つまり、ジョブ・クラフティングは、従業員が自ら仕事の進め方や内容を工夫し、仕事に対する見方や考え方を積極的に変えていくことで、働きがいを高める取り組みなのです。単に与えられた業務をこなすのではなく、仕事の意味や方法を改めて考え直してみることで、より意義深く、やりがいのあるものとして捉え直すことができます。
「自分の仕事の意味や方法を改めて考え直してみる」と書きましたが、どのように進めていけばいいのでしょうか。通常、与えられた業務をこなすのに精一杯で、その業務の意味なんて考えたことがない方がほとんどでしょう。ここで大切なのは、先ずは一度立ち止まって、今与えられている業務について考えてみようという意識を持つことです。
この意識をもって自分の仕事を整理することで、与えられた仕事というやらされ感をなくし、日々の業務により積極的に取り組むモチベーションを感じることができるはずです。
ジョブ・クラフティングの進め方
それでは、ジョブ・クラフティングの具体的な進め方を説明します。
自己理解
ジョブ・クラフティングの定義にもある通り、「自分の価値観や強み」を理解して活かすことが前提となります。自身の強みと弱みを知るために過去の成功体験や失敗経験を振り返ったり。最も力を発揮した状況や困難を感じた場面を分析したりします。何に喜びを感じ、何に意義を見出すのか、どのような環境で最もやる気が出るのか、自分の価値観やモチベーションの源泉を明確にすることが重要です。しかし、自己理解もそんなに簡単ではないと実感されている方も多いと思います。自己理解の具体的な方法については、「自分の強みや価値観を知る」に詳しく解説しましたのでこちらをご覧ください。
目標の設定(ありたい姿のイメージ)
キャリアや個人の成長に関する目標を設定します。3年後にありたい姿をできるだけ具体的にイメージします。どのようなキャリアを目指したいのか、どのようなスキルを身につけたいのかを考えます。できれば、10年後にありたい姿についても同様に具体的にイメージしてみましょう。このありたい姿の目標が、後のジョブ・クラフティングのアクションの指針となります。
業務の分析
ジョブ・クラフティングはこちらの分析がメインとなります。日々の仕事内容を以下の視点で細かく書き出してみます。
・その業務の内容
・その業務に関わっている人間や部署
・その業務の意義
その上で、「プロセス(仕事のやり方)」「関係性(人との繋がり)」「認知(仕事の捉え方)」という3つの視点から具体的に自分の仕事の意味や方法を改めて考え直してみましょう。
プロセスのクラフティング(仕事のやり方を変える)
プロセスのクラフティングは、日々の業務・作業を自ら再設計し、自分にとって魅力的で価値ある業務と捉えられるように変える取り組みです。
・与えられた仕事の範囲や方法を当たり前と思わず、業務の追加・削除・修正を行う
・他チームや他部署の業務にも関心を持ち、業務の幅を広げる
・新しいスキルを習得するための自己学習の時間を確保し、それを実際の業務に応用する
・自身のスキルや能力、興味を活かせる業務を上司に提案する
例えば、会議の議事録を書く業務の場合、そこに書かれている技術的な内容を調べて深ぼってみる、法務チームと連携する場合、法律知識も求められている以上に突っ込んで深める、会議の運営業務の場合、生成AIを学んで議案や進め方を求められている以上に効率化してみるというイメージとなります。
関係性のクラフティング(人とのつながりを変える)
関係性のクラフティングは、個人が主体的に職場での人間関係の質や量を変えることで、自身の仕事の価値や意義をより深く理解し、再構築する取り組みです。
・普段接点の少ない部署の人達と積極的にコミュニケーションの機会を持つ
・上司(部下)とのコミュニケーションの仕方を見直す
・顧客との直接的なコミュニケーションを増やす
例えば、他部署のメンバーと積極的にコミュニケーションをとることで、自分の仕事が組織全体にどう貢献しているかを捉え直す、顧客とコミュニケーションすることで、顧客や社会に提供している価値を知る、上司や後輩との関係性を業務上の指示・報告関係から、仕事の意義や将来について深い対話ができる関係へと変化させるというイメージとなります。これらの活動は、単に人間関係を広げるだけでなく、その過程で自分の仕事の意味づけを変化させ、仕事への満足度や組織へのコミットメントを高めることができます。
認知のクラフティング(仕事の捉え方を変える)
認知クラフティングは、私たちの仕事に対する見方や考え方を変えていきます。普段、与えられた仕事の意義や目的を考えることはないため、日々の業務にやりがいを感じられない、自身の成長や貢献を実感しにくい状況となります。
・日々の業務が会社や社会にどのように貢献しているかを考える
・仕事と個人の価値観のつながりを考える
・個人の長期的目標との結びつきを考える
例えば、一見地味なアンケート修正作業も、顧客満足度の向上に貢献していると捉え直し、自分なりにインサイトを考えてみること、つまらないと感じる取締役会の議事録作成業務を法律的に深く調査して法務知見向上の機会とすること、コールドコールでの営業という困難な業務をマーケティング視点から顧客の声を聴く機会と捉え直すといったイメージとなります。
日々の業務の中で小さな改善を積み重ねていくことで、個人のパフォーマンスが向上するだけでなく、自己肯定感や仕事へのエンゲージメントも高まり、結果として組織全体の生産性向上にもつながります。
組織としてのジョブ・クラフティングへの取り組みとは?
ジョブ・クラフティングは基本的に個人が主導する活動ですが、会社は組織として適切な環境整備や制度設計をすることによって、支援することができます。ジョブクラフティングは、キャリア自律に向けた取り組みの一つとも言えますので、従業員のキャリア自律を目指したい企業で、自社中心でのキャリア自律を検討したい企業(転職されてしまうことが心配な企業)はここから始めてみるのがよいでしょう。
上司からのサポート
・定期的な上司との1on1ミーティングを通じて、従業員の興味や強みを話し合うと共に、一緒にジョブ・クラフティングの取り組みを考える。
・従業員のジョブ・クラフティングの進捗や課題を共有することで、従業員は自身の取り組みを継続的に改善する。
・組織の目標と個人の目標をすり合わせ、従業員が自身の仕事の意義を見出せるよう支援する。
・業務の進め方や時間配分にある程度の裁量権を与え、上司としてできる範囲で自由に決められる環境を作る。
会社としてのサポート
・ジョブ・クラフティングに関する研修やワークショップなどを実施し、ジョブクラフティングに対する理解を深める
・従業員が自身の考えや提案を自由に表現できるよう、新しいアイデアを歓迎する雰囲気や失敗を恐れずに挑戦できる職場環境(文化)をつくる。
・ジョブ・クラフティングの成功事例を共有したり、定期的に従業員の新しいアイデアや発想を評価し表彰したりする。従業員が自身の貢献を認識し、同時に他者の成功事例から学ぶ機会をつくる。
・ジョブ・クラフティングの実践の場として、従業員に対して、自身のスキルや興味を活かせる新たな課題や役割に挑戦する機会を提供する。例えば、部門横断的なプロジェクトへの参加、新規事業の立ち上げへの関与、あるいは社内公募制度の活用など。


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